遺書と恋文

頭痛腹痛毘沙門天

「短歌に興味がある。自分も詠んでみたい」

この数週間のあいだの話だ。偶然、一気に3人のフォロワーから相談された。

その相談を受け、とてもうれしかった。もっといろんな人に現代短歌の魅力を知ってほしいと常々思っていたので、布教のチャンスだと思った。

3人のうちの1人、Yくんは俳人などではなく、そもそも創作活動をしたことがないらしかった。だから僕に尋ねた。「どこから始めたらいい?」

わくわくしながら、どうすれば短歌の楽しさが伝わるだろうかと考えてみた。以下をメモのつもりで残しておこうと思う。今後も何かしらで使えるかもしれないので。

 

  • そもそも短歌とは
  1. 57577の31字でなる定型詩
  2. 季語は必要ない
  3. 俳句が一句、二句、と数えるのに対し短歌は一首、二首、と数える
  • 歌集は最低でも2冊、読んでみること

というのは、まず短歌はハードルが高いものではないと知ってほしいから。現代短歌は口語的だ。話し言葉やメールでの言葉遣いが主流。写実的なものより心象風景が多いこともまた特徴だ。和歌のような修辞法は必要ない。歴史的仮名遣いである必要もない。

だから構えないで、まず2冊気になった歌集を読んでみて、「こんなのも短歌なんだ」と現代短歌に触れてみることから始めてほしい。ちなみに2冊というのは、1冊めで「うーんあんまり…」と感じてしまい、やっぱり向いてない、とやめてしまうのはもったいないから。1冊でやめてしまわず次に読んだ2冊めがあなたにとって琴線にふれる歌集かもしれない。

以下は、まずどこから読んでみようかと迷っている人に勧めたい歌集。短歌に持っているイメージが変わるはずだ。

遠くから来る自転車をさがしてた 春の陽、瞳、まぶしい、どなた

これは僕が初めて手にした歌集。2人の歌人による往復書簡で、春に出会い春におたがいを失った男女の物語が広がっていく。全部を通してひとつの作品。

「元気です」そう書いてみて無理してる自分がいやでつけくけくわえた「か?」

枡野浩一氏は歌人でありコピーライターでもある。そのためか歌のひとつひとつがするどい。絶版により価格が高騰してしまっているが、同じく枡野浩一氏の歌集「てのりくじら」「ドレミふぁんくしょんドロップ」は安価で手に入る。ドラえもんというキャラクターや話を進行していくうえで必須になる便利道具を詠んだ「ドラえもん短歌」も入門編として手に取りやすいはず。

  • 七五調に慣れること

破調が好きだ、破調で詠みたい、という人ももちろんいるだろうけれど、詠み始めてからの100首200首のうちは定型で詠んでほしい。

七五調に慣れることでだんだんリズムが身につきはじめこそ一音一音を指折り数えていても、いずれ途切れ途切れに数えずともすとんと自然に七五調になっていくから。

いつもより一分早く駅に着く 一分君のこと考える

日が陰る校舎の隅に響いてた和声の中に君を探した

定型の歌集として勧めたい2冊。オーソドックスな七五調に慣れさせるのに向いていると思う。サラダ記念日は有名だが、俵万智氏の歌は意外にも定型。「タルト・タタンと炭酸水」もまたきれいな定型なので、そういう歌集を読んで七五調を感覚に叩き込んでほしい。

  • 日々の生活を送るなかでこころが動いたときのことについてメモをしておく

春めいた風のにおいがしたとき。非常階段から見えた景色。傷付いていると気付いたきっかけ。

なんだって良い。なぜこころが動いたんだろうと考えたときに出てきた言葉、モチーフ、何なら色や音でも。メモを取っておこう。

ただ、すぐにそれを短歌にはしない。すこし寝かせて後日そのメモを見たときの感情を歌にする。もちろんメモに残すにあたって思いついた七五調を書いておいても良い。

  • ひたすら詠む

そのままの意味。ひたすら読んで、ひたすら詠む。まずは技法にはこだわらなくていい。オノマトペ、リフレイン、枕詞に本歌取り。さまざまな技法があるが、最初のうちは「七五調」と「定型」であることだけに気を付けて詠む。形になってきたらそこでようやくそれをたたき台にして添削・推敲をしていく。土台になる歌がないと始まらないのでとにかく詠んでほしい。

 

また追加することがあるかもしれないので随時書いていこうと思います。